沿革
金融・経営リスク科学科は平成21年4月に社会システム科学部における経営情報科学科,プロジェクトマネジメント学科に次ぐ3つ目の学科として開設されました。
近年,我が国第二期及び第三期の科学技術基本計画において,その基本理念として「安心・安全で質の高い生活のできる国」が掲げられ,リスクマネジメントの専門家に対する需要が高まってきました。社会システム上の多様なリスクへの適切な管理を行うためには,個人の生活から企業・国家の経営までにいたるリスクについて,それらが顕在化するメカニズムを理解した上で対策を立案,具体的施策をとることが有力な手段となり,そのような能力をもつ人材を社会へ供給する教育が求められるようになってきました。特に,金融リスクをはじめとする金融・経営システムに関するリスク研究の必要性は増しているといえます。
そこで,社会システム科学部に既設2学科で培ってきた経営工学・数理工学的手法を発展させ,安全・安心を守る経営手法を開発するための教育・研究を行う金融・経営リスク科学科を設置することになりました。
教育について
(1) ディプロマ・ポリシー(教育方針)
企業の活動や個人の日常生活において、様々なリスクが存在するが、その中でも特に金融リスクや 経営に関連したリスクを対象としており、これらは、企業の資金調達や投資、運用におけるリスク、 情報セキュリティや生産に関連したもの、更に日常生活におけるリスクを意味している。 これらのリスクについての基礎的な知識に加えて、企業活動や日常生活におけるリスクを最小限に抑える リスクマネジメントの手法を身に付けることを目指す。金融や経営におけるリスクについて、 様々な分野から解決する糸口を見いだし、その対策を講じて快適な社会作りに貢献できる人材に学位を授与する。
(2) カリキュラム・ポリシー(授業のカリキュラムに関する基本方針)
5項目の学科共通の学習・教育目標を設定している。確率・統計や最適化手法を含む数理工学的手法、 情報システム技術、信頼性や安全解析を含む経営工学、及びリスク管理の対象となる金融・情報・生産・生活の 各分野に係わる社会科学的視点を踏まえた科目郡によるカリキュラムを構成し、ディプロマ・ポリシーの達成を目指す。
(3) 身に付けることを目標とする能力
本学科における教育・研究活動を通じて、身に付けることを目標とする能力は、以下のとおりである。
@ 金融・経営リスクを早期に発見する能力
社会を構成する組織体をシステムとして捉え、各種組織体の相互関係と活動目的を理解し、 生活者の安全・安心に係る潜在的リスクの所在を過去の事例などを通して、広い視野から情報収集し、 リスク事象を発見する能力を養成する。
A 金融・経営リスクの発生過程を分析し、その影響の大きさを評価する能力
従来からの決定論的な現象生起過程解析にとどまらず、確率・当駅などの数理的基礎の理解に基づく、 不確実な現象を定量的に取り扱う能力を高める。
B 金融・経営リスクが生じる背景を理解し、対策とその波及効果を理解する能力
リスクが顕在化する道筋を正しく理解した上で、リスクの回避・削減・分散・移転などの対策を立案するために、 情報通信、科学技術、金融経済、際勝環境などの動向や仕組みに関する基本的な理解能力を高める。
C 金融・経営リスクの問題解決のためにコミュニケーションを行う能力
ディスカッションやロールプレイを活用したゼミナールや演習を行い、リスク管理に向けた社会的合意形成のために必要となるコミュニケーション能力を養う。
研究について
金融・経営リスク科学科は,社会システムにおける事業組織の資金調達や資産運用に係わる金融リスク及び情報,生産・製造,生活に係わる経営リスクの問題について,科学的な方法論を基本として解決を図る教育・研究を行っています。
専任教員のもとで行う研究は,金融・財務・法規遵守・情報管理などの企業経営管理に係わるリスク,製品安全・品質保証・労働安全・環境保護など生産や流通事業に係わるリスク,食品や商品の消費・医療・身近な環境などの生活に直結するリスク,及びリスクを科学的に解析する数理科学的な手法論,さらにはリスクの認知やコミュニケーションに関連する心理的側面などにわたります。
学年は3年次からゼミナールや卒業研究を通じて,専任教員の指導のもと,このような分野の題材をもとにリスク管理の手法論などに関する研究を行います。
就職・進路について
リスクマネジメントは企業経営のみならず,個人や家庭のレベルから国家・地球規模まで,多様な分野で実施されています。また,「安心・安全な社会」構築のためにはリスクマネジメントができる人材に対するニーズは高まってきています。したがって,リスクマネジメントを学習した者が活躍できる場は多岐にわたります。具体的な就職先としては,事業系企業の経理・財務部門,金融・証券・保険業界,情報通信や製造業における生産管理・品質管理部門,あるいは製品企画・開発部門や環境管理部門,行政における危機管理部門,さらにはフィナンシャルプランナー,証券アナリスト,税理士,公認会計士,消費生活アドバイザーや経営コンサルタントなどへの道が想定されています。